なぜ人はサブスクサービスを好むのか?


様々な業種でサブスクリプションサービス(以下サブスク)が浸透してきています。

小売業者から美容製品、音楽、映像コンテンツまで、多くのビジネスがこの新たなモデルに移行しています。

しかし、その背景には、顧客の購買行動に与える影響があると言われています。

この記事は一言でいうと​「サブスクが顧客の購買行動に与える影響について」です。​

サブスクは、月額や年額払い会員に継続的にサービスを提供するモデルです。

このようなサービスを提供することで、企業は顧客との長期的な関係を築くことができ、顧客はそのサービスの中で企業への信頼や安心感からファンになったりします。

さて、多くの人がサブスクサービスを利用する理由として、一定の価格で予測可能なサービスを受けられる点が挙げられます。

例えば、美容製品小売業者のサブスクは、年間50ドルの加入料金で、送料無制限無料、月々のギフトカード提供、無料サンプルの提供などの特典が受けられるなどです。

これにより、顧客は予想外の費用がかからず、定期的に新しい製品やサービスを試す機会を得ることができます。

また、サブスクを利用することで、顧客は自分のライフスタイルや好みに合わせた製品やサービスを手に入れることができます。これは、単に商品を購入するだけでなく、新しい体験や価値を得ることができるため、多くの人々に支持されています。

サブスクは、顧客にとっての価値提供と企業にとっての長期的な関係構築の両方を可能にしています。

これからも、多くの業界でサブスクがさらに普及することが予想されますので、ぜひこの動向を注視してみてください。

10,811人を対象にサブスクを調査


この記事を読むことで、

  1. 戦略的意思決定のサポート: 企業はサブスクの効果を具体的に把握することで、そのビジネスモデルの採用や継続の判断材料とすることができます。
  2. 顧客の購買行動の理解: 顧客が製品の購入においてどのような選択をするか、またその背後にある動機を深く理解することで、より効果的なマーケティング戦略や製品の提案が可能となります。
  3. 長期的な顧客関係の確立: サブスクの長期的な効果を知ることで、顧客との長期的な関係を構築するための戦略を練る材料となります。

これらが学べます。

ラグラム・アイエンガーらの研究で美容製品を取り扱うアジアの小売業者のデータが使用されました。

この企業は、自社のECサイトでサブスクを提供しており、その参加者数は10,811人。分析に使用されたデータ期間は、サービス提供前後の24ヶ月間です。

購買頻度の上昇


・サブスク導入前と導入後の顧客の平均購買回数を比較したところ、サブスク導入後は月平均1.15回増えました。

これは、サブスクが顧客の購買意欲や購買の頻度を高める効果があることを示唆しています。

この結果にはいくつかの要因が考えられます。

まず、サブスクは、一定の期間ごとに特定の商品やサービスを自動的に提供する仕組みとなっています。

これにより、顧客は商品の再購入を考える手間や時間が省け、定期的に商品を手に入れることができるようになります。

また、サブスクは、多くの場合、一回あたりの商品の単価を低く設定しています。

これにより、顧客はコストを抑えつつ、定期的に商品を利用することができ、購買の敷居が低くなっています。

さらに、サブスクによる商品の定期提供は、顧客と企業との関係をより強固にし、顧客のロイヤリティを高める要因ともなります。

以上の要因から、サブスク導入後の購買回数の増加は、顧客の購買行動に与えるサブスクのポジティブな影響を如実に示していると言えるでしょう。

“多様な製品選択”


・サブスク導入後95%以上が既知のカテゴリー、残りが新規カテゴリーから購入

しかし、同カテゴリーでは、75%が新製品の購入であった。

結果、サブスクは顧客の購入頻度を増加させ、多様な製品・カテゴリーを購入させる効果がある。

この実験結果は、サブスク導入後の顧客の購買行動の変化を示しています。

顕著な結果として、顧客が購入する製品カテゴリーの増加が確認されています。

具体的には、購入される製品カテゴリーのうち、95%以上が顧客が以前から知っているカテゴリーからのものであり、残りが新規のカテゴリーからの購入であることが示されています。

このことは、サブスクの導入が、顧客の製品に対する探求心や新しい製品・カテゴリーへの興味を喚起する効果があることを示唆しています

さらに、製品レベルでは、購入される製品の75%が新製品であったという点も非常に興味深い。

これは、サブスクのメンバーが新製品を試す意欲が高まっていることを示しており、企業にとっては新製品の市場導入やプロモーションの際に、サブスクのメンバーを主要なターゲットとして取り組むことが有効であると考えられます。

総じて、この実験結果から、サブスクリが顧客の購買行動に与える影響は大きいことが確認されました。
サブスクは、顧客の購入頻度を増加させるだけでなく、多様な製品・カテゴリーの購入を促進する効果があることが明らかとなりました。

“効果の持続性”


・加入後2カ月間が最も購入額があがる(40.57ドル増)。その後、後4カ月以上も持続的に購入額増(月あたり25.53ドル増)。

この結果は、サブスクが顧客の購買行動に長期的な影響を与えることを示しています。

特に注目すべきは、サービス加入後の初期2カ月間での顧客の平均支出増加が最も大きいという点です。

この期間に、顧客一人当たりの平均購入額が40.57ドル増加しているのです

この急激な増加は、おそらく新たなサブスクへの加入者がサービスをフルに活用しようとするものと解釈できます。

加入直後の顧客は、加入費用を正当化するため、またサービスをテストするために、より多くの商品を購入する傾向にあるのです。

しかし、更に重要なのは、その購買意欲が一過性のものではないことです。

加入後4カ月を経過した後も、顧客は依然として毎月平均25.53ドル多く支出しています。

この持続的な購買活動の増加は、顧客がサブスクの利点を認識し、それに応じて購買行動を継続的に調整していることを示しています。

長期的視点で見ると、この結果はサブスクが顧客のロイヤリティを構築し、顧客のライフタイムバリューを高める効果的な手段であることを強く示唆しています。

企業にとって、顧客の継続的な関与は収益の安定性と成長を意味し、これはビジネス戦略としてのサブスクモデルの価値を明確に後押ししています。

まとめ


簡単にまとめると、まず、会員の購買頻度が月あたり約1回増加していることが明らかになりましたが、1回あたりの購入量は若干減少しています。

次に、会員が購入する製品カテゴリーは増加しており、その中でも75%が新しい製品を選んで購入しているという結果が得られました。

さらに、サブスクの導入初期からの購入量の増加効果は、長期的にも持続しており、特に加入後2カ月間で最も大きな増加が見られました。

これらの結果を通じて、サブスクの導入は、購買頻度や製品の多様性の増加など、顧客の購買行動に明確なポジティブな影響をもたらしていることが確認されました。

Bookmarkチームの
活用考察


今回の研究で、サブスクがもたらす効果について深い理解が得られたと思います。

やはり多くの大企業が取り入れているビジネスモデルだけあって、得られるメリットは多いですね。

では実際にサブスクをビジネスで取り入れる際の活用方法について考えてみたので、よければ参考にしていただけたらと思います。

  1. 新製品のテストマーケティング
    サブスクメンバーの高い新製品への関心を利用し、新製品のテストマーケティングを行う。メンバー限定での新製品提供やフィードバック収集を行い、市場導入前の調整を行う。

    メリット:製品の市場適合性の確認、リスク軽減、早期の製品改善。

  2. ターゲットプロモーション
    サブスクメンバーの購買データを解析し、個別の購買傾向に合わせたターゲットプロモーションを展開。例えば、特定のカテゴリー製品の愛用者に新製品情報や割引クーポンを提供する。

    メリット:効果的なマーケティング、顧客満足度の向上、再購入率の増加。

  3. メンバーシップレベルの導入
    サブスクモデル内でさらに上位のメンバーシップレベルを設定。高額なサービスや特別な特典を提供し、高いロイヤリティを持つ顧客を対象とする。

    メリット:高額な商品やサービスの売上向上、顧客のロイヤリティ強化。

サブスクリプションモデルの採用は、単なる流行や一時のブームを超えた、ビジネスの新しいスタンダードとしての地位を確立しています。

その背後に隠された顧客の購買行動の変化を理解し、それを最大限に活用することは、今後の競争力を高めることになるでしょう。

実際にサブスクモデルを導入し、ご自身のビジネスの飛躍に役立てていただけたらと思います。

Inspired by The Impact of Subscription Programs on Customer Purchases/Raghuram Iyengar, Young-Hoon Park, and Qi Yu*/2020-01/https://faculty.wharton.upenn.edu/wp-content/uploads/2020/08/SSRN-id3529681.pdf